日本輸血・細胞治療学会

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輸血について

1)輸血はどのような時に必要になるのでしょうか?

 

血液は、赤血球、白血球や血小板といった細胞成分と血漿成分からできていて、以下に示すように独自の働きを持っています。十分な血液を作れない場合や、出血が大量なために、生命に危険が生ずる場合や、血液を固めるタンパク質(凝固因子)が足りず、出血の危険がある場合にそれらを補う必要があります。輸血は、それをヒト由来の血液または血液成分で補う治療法の一種です。輸血で補うことができる成分は、主に赤血球、血小板、血漿成分および凝固因子です。輸血は、それぞれの状況に適した血液製剤を選んで輸血します。

 

①赤血球

 

赤血球は酸素を全身に運搬する役割を持っています。けがや手術で出血したり、血液の病気や抗がん剤等で赤血球が作られなくなったりすることを貧血と言います。貧血が高度になると組織への酸素運搬が障害され体の組織は酸素不足に陥り、心臓も含めて組織が障害されます。この場合には、赤血球液の輸血を行います。

 

 

②血小板や凝固因子

 

血液の中の血小板や凝固因子(血漿成分に含まれています)は 出血した部位の血を止める役割を担っています。手術や大けが、化学療法などで血小板や凝固因子が減少すると血が止まらなくなり、さらに進行すると全身の皮膚、臓器に出血をきたし酸素が不足し血圧が保てなくなります。この場合には、血小板や必要に応じて血漿成分や凝固因子の補充を行います。凝固因子は、出血が起きたときに、血小板や赤血球と一緒に頑丈な血栓を作って傷口を塞ぎます。

 

③血漿

 

血管内と心臓内に充満した状態で心臓から血液が駆出されることによって血圧を維持することができます。しかし、けがや手術で大出血して、循環している血液の20-30%以上血液が失われると血圧が維持できなくなりショック状態となります。 そうなると酸素が全身に運ばれませんので、生命の危険があります。こうした場合には、血管内の血液量を維持し、血圧を維持するために輸液と共に赤血球輸血、必要に応じて血漿成分/アルブミンの補充が行われます。また病気により血漿中のタンパクが減少すると、血漿が血管から漏れてくるため(浮腫)、高濃度のアルブミン等を補充して浸透圧を保ちます。

 

 

2)輸血の種類について

 

輸血用血液製剤には、主に「赤血球液製剤」、「濃厚血小板製剤」、「新鮮凍結血漿」や「血漿分画製剤」があります。
現在は、採血した全血献血は遠心分離して、赤血球、血漿、血小板の3種類の成分である「赤血球液製剤」、「濃厚血小板製剤」、「新鮮凍結血漿」に分けられます。 成分献血(アフェレーシス)で採取された献血血液からは、「濃厚血小板製剤」と「新鮮凍結血漿」が得られます。このように、患者さんが必要とする成分だけを輸血する「成分輸血」が主に行われています。新鮮凍結血漿からはさらに「血漿分画製剤」が作られます。これには、「免疫グロブリン」、「血液凝固因子」、「アルブミン」などが含まれます。「成分輸血」は、患者さんにとって不必要な成分が輸血されないですむため、循環器(心臓や腎臓など)の負担が少なくてすみます。貧血には赤血球製剤、出血症状には血小板製剤や凝固因子製剤や血漿製剤を輸血します。血圧の維持には赤血球、新鮮凍結血漿、アルブミン製剤等も投与します。それぞれの製剤の特徴を図1に示します。

 なお、予定された手術前に、事前に自分の血液を保存しておくこともあります(自己血採血)。主治医にご相談ください。

 


図1.血液製剤の採血法と種類

 

3)血液型の確認(ABO/Rh)、交差適合試験、不規則抗体スクリーニングについて

 

輸血を安全に行うため、または副反応(副作用)がないかを調べたりするための検査が行われます。これには血液型検査、不規則抗体検査、交差適合試験、輸血前後感染症検査、必要に応じて抗HLA抗体検査等があります。

 

4)輸血による副反応(副作用)

 

献血者の各種検査の改良などにより、献血血液の安全性が向上し、輸血後肝炎などは極めて少なくなりました。しかし、危険性が完全にゼロではありません。血液製剤による副反応内容と頻度は、下記の表の通りです。副反応の多くは、軽症で輸血中あるいは直後に生じます。

 

表1.輸血による副反応

1.免疫学的副反応
A.溶血性輸血反応
主に赤血球との相性が悪い場合に赤血球が破壊されて起こります。→赤褐色尿、貧血、黄疸症状がでます(1-2週間後)。

B.非溶血性輸血反応
①アレルギー反応:皮疹やかゆみ、目や唇のむくみといった皮膚症状や発熱から重いショックまでさまざまです。
②輸血後GVHD:血液製剤中のリンパ球が患者さんを異物と認識して攻撃する症状です。皮膚、肺、消化管が障害され重篤化しますが、現在は予防法が発達しているので殆ど報告はありません。
③呼吸不全(輸血関連急性肺障害TRALI):輸血後数時間以内に非心原性の急激な肺水腫による呼吸困難を呈する重篤な副作用です。

2.感染症
検査や対策方法が進み、感染症を生じることは非常に稀ですが、全くゼロというわけではありません。
①細菌感染症(カンピロバクター、病原性大腸菌などによる敗血症)
②ウイルス感染症(A型、B型、C型、E型肝炎、HEV、HIV感染、パルボB19、サイトメガロウイルス等)
③その他マラリア、狂牛病など

3.その他
①循環過負荷(TACO):輸血によって心蔵・循環器系に負荷がかかった状態です。
②鉄過剰症:頻回輸血により赤血球に含まれる「鉄分」が体に取り込まれ、不要な鉄を体外排出できなくなった状態です。鉄は肝、心臓などに貯まり機能を障害します。鉄キレート剤などで治療する場合があります。

*発症頻度は、年毎に変動があります。予防・治療について、詳しくは主治医にお尋ねください。

 

5)輸血後の検査について

 

輸血による合併症・副反応の有無を確認するために、輸血2~3か月後に受診して肝炎ウイルスやHIVウイルスなどの検査をする場合があります。担当医から説明がありましたら、ご協力お願いします。

 

6)血漿分画製剤の副反応について

 

血漿分画製剤は最近きわめて安全になってきましたが、ごくまれにアレルギー症状等の副反応や合併症があります。

 

7)副反応は防げるの?

 

  • 予防:輸血をする前に、あらかじめひどいアレルギー症状にならないために抗アレルギー剤の投与を行うことがあります。輸血で重度な副反応が出たことがある患者さんには、症状によってはステロイド剤を事前に投与することもあります。

血液製剤中の白血球はあらかじめ除去されていますが、さらに血液センターまたは病院で放射線をかけて患者体内での攻撃性を持つリンパ球が増えないようにしています。次の輸血の副反応を予防するために、再度血液検査が必要な場合があります。ご協力お願いします。

 

8)副反応が出た場合にはどうするの?

 

  • 副反応症状が出た場合には、各症状に応じた治療を行います。
  • 輸血や人の血液などを原料にした医薬品(生物由来製品といいます)が原因で健康被害が生じた場合には「生物由来製品感染等被害救済制度」という国の補償制度があります。 かかりつけの病院の事務または主治医にご相談ください。