日本輸血・細胞治療学会

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細胞治療について

はじめに


細胞治療とは、自身の細胞または他人の細胞を用いて疾患を治療する治療法で、近年様々な細胞治療が行われるようになってきました。投与された細胞の働きで疾患を治療する細胞治療もあれば、投与された細胞が別の細胞に形を変え疾患を治療する細胞療法もあります。前者に相当する赤血球輸血は、健常ヒトから得られた赤血球を患者さんに投与することによって、赤血球で運ばれる酸素の供給を増やし患者さんに活力を与える治療法です。後者の代表に、造血幹細胞移植と呼ばれる治療法があります。


造血幹細胞


図1 造血幹細胞ヒトの造血幹細胞です。
未熟な形態をしています。
造血幹細胞とは、血液中の白血球、赤血球、血小板を作り出す種の細胞のことで、自身を複製することができますので枯渇することはありません(図1)。造血幹細胞は、細胞表面にCD34と呼ばる特有の抗原が出ており、CD34を目印として、CD34を持っている造血幹細胞の数を測定することが出来ます。造血幹細胞は、骨髄血、臍帯血、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を投与した後の血液(末梢血)に数多く見られます。


造血幹細胞移植


造血幹細胞を含む血液を投与し、造血幹細胞から白血球、赤血球、血小板を作らせ、その過程で疾患を治療する治療法を造血幹細胞移植と言います。造血幹細胞を点滴で血管内に投与すると、自然に造血幹細胞は骨髄に辿り着き、そこで造血(図1)を開始します。造血幹細胞移植には、2つの移植法があります。一つは、自家末梢血幹細胞移植と言われるもので、患者さん自身の造血幹細胞を使う治療法です(図2)。悪性リンパ腫や多発性骨髄腫の患者さんに行われます。もう一つに、同種造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)と言われるもので、他人の造血幹細胞を使う治療法です(図3)。白血病の患者さんによく行われます。


図2 自家末梢血幹細胞移植強力な治療
(移植前処置)後、自身の末梢血の造血
幹細胞を自身に戻し血液を回復させる
治療です。
図3 同種造血幹細胞移植強力な治療
(移植前処置)後、ドナーから得た造血
幹細胞を患者さんに戻し血液を回復させる
治療です。

細胞プロセシング


造血幹細胞移植を行うに当たり、採取した細胞の中のCD34 陽性細胞を測定し、場合によっては、赤血球を除き、造血幹細胞を生きたまま凍結保存し、凍結保存した造血幹細胞を溶かし投与することが行われます。これらの一連の過程は、細胞プロセシングと呼ばれます(図4)。細胞プロセシングは、工業製品の製造と品質管理に相当します。日本輸血・細胞治療学会は、細胞プロセシングに関するガイドラインを発表し、セミナーを開催し、テキストを発行するなどして、細胞プロセシングが適正に行われるよう指導しています。安全で高い品質の造血幹細胞を準備し投与することによって、造血幹細胞移植の成績を高めることが期待されます。投与した造血幹細胞に問題があった時、その原因を遡って調査する(遡及調査)ため、細胞プロセシングの記録は保管されます。

病院で行われる末梢血幹細胞採取と日本赤十字血液センターで行われる成分採血(血小板採血)は、ともに血液成分採血装置を使い体外循環によって目的とする細胞を採取しますが、アフェレーシスと呼ばれます。アフェレーシスには、副作用が伴うことが知られています。日本輸血・細胞治療学会は、安全なアフェレーシスに寄与する専門の看護師を教育し認定する「学会認定・アフェレーシスナース制度」を発足させました。現在までに146人のアフェレーシスナースが誕生し、アフェレーシスの現場で活躍しています。


図4 細胞プロセシング
採取した細胞を処理します。それをバッグに詰め患者さん投与します。

おわりに


日本輸血・細胞治療学会は、関連する学会や団体とともに、安全な造血幹細胞移植を行えるよう、造血幹細胞移植の基盤整備に取り組んでいます。