日本輸血・細胞治療学会

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理事長挨拶

一般社団法人日本輸血・細胞治療学会 理事長 岡崎 仁
 令和5年(2023年)5月より、日本輸血・細胞治療学会の理事長を務めることとなりました。日本輸血・細胞治療学会は今年で69周年を迎える日本医学会連合の中でも歴史のある学会です。1954年に日本輸血学会として創立以来、本学会は安全な輸血医療を患者さんに提供するために、会員一同努力して参りました。

 輸血医療は善意に基づく献血者の血液無しには成り立たない医療です。その貴重な血液を安全にかつ有効に患者さんの治療に結びつけるために、本学会は不断の努力を続けてまいりました。日本赤十字社によるさまざまな安全対策により、近年では血液製剤自体の安全性はかなり高まってきて、世界と比べても決して遜色のないレベルにまで達しています。しかし、現場の輸血療法においてはいまだ慣習に基づく不適切な輸血療法や、安全とは言えない治療が行われている可能性があります。いまだに血液製剤の誤投与によるインシデントはあとを絶ちません。本学会は献血者から患者までをつなぐ輸血の鎖(Transfusion chain)のすべての段階で、安全で適正な運用が行われるよう、常に努力を続けていかねばなりません。そのためには、さまざまな職種の医療従事者が輸血に積極的にかかわり、問題点を早期に発見し、常に改善を目指し続けることが必要です。

 輸血療法は失血した患者さんの血液を補充するということから発展してきた治療ではありますが、近年では単なる補充療法ではなく、エビデンスに基づいて患者さんの予後の改善につながる治療法としての評価が確立しつつあります。輸血療法のエビデンスをもとに、本学会でも種々の輸血に関わるガイドラインを発出し、輸血療法のさらなる発展に貢献しています。現状、エビデンスの多くは海外の研究に頼っており、日本国内での研究を推進するように学術的研究の支援の拡充を図りたいと考えております。また、近年急速に発展しつつある細胞療法についても、輸血療法で培った安全に対する考え方や技術を応用し、さまざまな新しい医療に対応できるよう体制の構築を行っていきたいと考えています。

 安全で良質な輸血細胞療法を行うためには、医師のみならず、技師、看護師、薬剤師など輸血に関わるすべての職種が協力し合うことが必要です。本学会としては各種認定制度や継続的な教育事業を通して、輸血細胞治療に関わる一人一人の知識、技術の向上を目指すとともに、それぞれの職種がお互いに協力し合うチーム医療の普及を目指し、関連団体と協力して活動していきたいと考えています。

 会員の皆様お一人お一人の協力が、患者さんのための最善の輸血細胞療法につながります。今後とも本学会の運営に関して忌憚のないご意見をお聞かせいただきたいと思いますので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

令和5年6月
一般社団法人日本輸血・細胞治療学会 理事長
岡崎 仁